政府のテレワーク実施目標の低さと働き方改革について『行政&情報システム』に掲載

Photo credit: Foter.com

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公務員のテレワークの使用状況とその目標値の低さについて、他国の利用状況と比較した結果や各国のテレワークの位置づけについて書かれた記事が『行政&情報システム』4月号に掲載されています。

「低すぎるテレワーク目標と政府の働き方改革」と題されたこの記事は、地域SNS研究会事務局庄司昌彦(国際大学GLOCOM准教授/主任研究員)が執筆したもので、「連載企画 行政情報化新時代」のNo.35として掲載されています。

現在、長時間労働の是正や柔軟な働き方の導入など働き方改革が進み始めていますが、民間企業だけではなく公務員も同様に改革によって改善すべき課題があります。そこで、日本、米国、韓国のそれぞれの国の職員、そして日本国内で積極的にテレワークを推進している佐賀県の職員でテレワークの利用率を比較しました。すると、米国が19.8%、韓国が12.9%、佐賀県が47.5%(いずれも2015年)に比べ日本政府の実施状況は3.3%(2015年)と、他に比べて低調と言えます。

また2020年度までの民間を含めた日本の全労働者におけるテレワーク実施目標の数値である10%を踏まえると、「国全体の雇用型在宅型テレワーカー比率に係る目標と比較して遜色のないレベルに達することを目指す」とした公務員の目標値は7~8%程度ととても低くなることが推測されます。日本政府のテレワークの位置づけは「ITによる行政改革」、「女性活躍、ワークライフバランス」、「地方創生」の3つの文脈があり、それらをふまえると政府の公務員のテレワーク実施目標値は低すぎるのではないかと考えられます。

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米国はテレワークをコスト削減や業務効率化、仕事と生活のバランスのほか政府存続計画としても位置付けています。テレワークについて法律を設け、統一的な枠組みを加速させるほか、テレワークについて専用のウェブサイトによる教育プログラムを活用しています。テレワークを支える基盤のために「クラウド・ファースト」政策も進展しています。

韓国では、テレワークを「スマートワーク」と呼びます。公務員の勤務形態、時間、方法、服装、場所の5分野を見直すなど柔軟な勤務を許可したり、住居地の近隣にスマートワークを実施するためのスマートワークセンターを政府が設けるなどしてスマートワークを推進しています。韓国でも米国同様全政府機関に共通するルールを整備しています。さまざまなレベルでの「共通化」がカギであるといえそうです。デンマークでも、必要なソフトを全て搭載してセキュリティ設定済みの端末を支給し、ビジネスIDを使うことで共通化された環境を用意しています。

Photo credit: Seth W. via Foter.com / CC BY-SA

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しかし、ただ環境を用意して制度改革をおこなうだけでは不十分で、意識改革も必要となります。子育てや介護などオフィスでの勤務が難しい人への支援策としてテレワークを位置付けているうちは普及率は少ないと予想されますが、業務の価値や効率の向上を目的としてすべての職員の日常業務と関わらせることで、普及率も上昇すると予測しています。そのためには、人が場所に紐づいていることを前提とする業務を見直したり、情報共有を各自が保管する紙からオンラインに変えたり、仕事の進め方などの裁量を広げ生産性を評価したり、オフィス改革をおこなったりすることで、全ての職員が力を発揮できるユニバーサルなワークスタイルを確立することが真の働き方改革になると述べています。

全文については、『行政&情報システム』4月号をご覧ください。