急速に発展する中国発の交通系2大シェアリングサービス

Camioneta andando por la ciudad

 中国におけるシェアサービスの市場規模は急速に拡大しており、世界最大規模になりつつあります。シェアリングエコノミーと言えば、米国発の配車サービスUberが挙げられますが、今後も著しい成長率が見込まれる中国市場では独自のシェアサービスが活発に展開されています。今回は、交通分野の2大サービスを紹介します。

1. 滴滴出行

 1つめは、中国版Uberとも呼ばれる滴滴出行(DiDi Chuxing)というライドシェアサービスです。対象地域として中国全土400都市以上を網羅し、1日1000万件以上利用されています。2012年に滴滴出行の先駆けとなる会社「北京小桔科技有限公司」が設立されました。その翌年2013年、騰訊(テンセント)が1500万ドルを投資し、優秀アプリに入選すると、2014年から2015年にかけ、中国平安や騰訊を中心に国内企業が数十億ドルもの多額投資を行い、瞬く間にサービスを急成長させました。2015年の利用量は14億3000件にも上り、これはUberが6年間かけて10億件を達成した実績を、滴滴が1年で達成したことに匹敵します。2016年5月にはAppleが10億ドルを投資し、8月にはUberの中国部門であるUber Chinaを10億ドルで買収し合併しました。この投資により、今後の自動運転技術や新たな輸送サービスモデルの開発などが期待されています。

 さらに滴滴出行は、行方不明の子どもの捜索システムへの参加を決めました。これは中国公安部(MPS)と阿里巴巴(Alibaba)の合同プロジェクトとしてローンチされ、今や中国全土に広がっています。滴滴出行が参加することで、例えば行方不明になった子どもの情報が報告されると、子どもに関する情報を、目撃情報のある地域を走行しているドライバーに一斉送信することができます。アメリカでも、UberやGoogle、Facebookでも同様のシステム「アンバーアラート(誘拐警報システム)」が、1996年導入以来、国内700人以上の子供発見に貢献しています。

2. 摩拝単車

  2つめは、現在北京のほか広州など中国各地で10万台以上を運用する自転車シェアサービス、摩拝単車(Mobike)です。利用者は、初回登録とデポジット299元さえ支払えば、あとは30分1元(約16円)で自由に専用自転車を乗り回すことができます。通常のレンタサイクルでは、利用後貸し出しポートに戻す必要がありますが、Mobikeは指定の駐輪場があるわけではないので、目的地で乗り捨てができます。外国人でも、パスポートと合わせて顔写真を登録すると利用することが可能で、観光で中国を訪れている際にも利用できます。自転車にはGPSが付いており、使いたい時にはアプリの地図上から最寄りの自転車を検索します。地図上で予約し、自転車のある場所まで行きます。自転車の鍵はQRコードで解錠する仕組みになっており、解錠する時に支付宝や微信支付を設定していればスマホ決済されます。

2016年10月にはMobike Liteという姉妹版サービスが登場しました。従来のMobike専用自転車から軽量化し、新しく荷物かごが備え付けられました。料金はさらに安くなり30分0.5元(約8円)という手軽さです。

このように、中国ではシェアリングエコノミーによって交通手段の多様化が進んでいます。特に滴滴出行は、走行車両の情報を収集することで、自動運転の基盤構築や渋滞の調整に役立つビッグデータの提供が可能となるため、今後は交通分野だけでなくIT分野での活躍も期待されています。

 

参考文献