米国におけるシェアリング・サービスの認知度・利用率に関する包括的調査

アメリカのシンクタンク、ピュー・リサーチ・センターが5月19日、シェアリング・エコノミーに関するアンケート調査の結果を公表しました。

●調査の概要

調査は4787人の成人男女を対象にしたもので、11カテゴリーの「新しいデジタルエコノミーサービス」の利用に関して尋ねたものです。

「新しいデジタルエコノミーサービス」には、オンラインのウェブサイトやスマートフォンアプリで提供されるシェアサービス、オンデマンドサービス、ギグサービス(需要に応じて単発あるいは日雇いで請け負う仕事)が含まれます。
これらに関する言葉について、「クラウドファンディング」を知っている人は39%、「シェアリング・エコノミー」は27%、「ギグ・エコノミー」は11%でした。

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上のグラフのように、全体で72%の人がこれらのうち何らかのサービス「使ったことがある」と答えました。「使ったことがある」と答えた人が多かったサービスとその具体的な例は以下の通りです。

  • オンライン中古品売買サービス(50%)
    例) eBayCraiglist
  • 当日配送または「お急ぎ便」などの有料プログラム(41%)
    例) Amazon Prime
  • チケット転売サイト(28%)
    例) StubHub
  • ハンドメイドまたはアーティストの作品のオンライン販売(22%)
  • クラウドファンディングサービスに参加(22%)
    例) KickstarterGoFundMe
  • ライドシェアサービスの利用(15%)
    例) UberLyft
  • ホームシェアサービスの利用(11%)
    例) AirbnbHomeAwayVRBO
  • 日用品を地元スーパーにオンライン注文し配達してもらう(6%)
  • シェアオフィスで仕事をする(4%)
  • 仕事やお使いをオンラインで依頼する(4%)
  • 衣服や道具をオンラインで一時的に借りる(2%)

一方、下のほうのグラフはこれらのうちいくつのサービスを利用したことがあるかを尋ねたものです。これらのサービスを全く利用したことがないという人が28%を占めることを示しています。

●カテゴリーごとの認知度、利用者の属性

この研究では、さらに「ライドシェア」「ホームシェア」「クラウドファンディング」の3つのカテゴリーについて詳細に分析しています。

UberやLyftなどのライドシェアサービスについては、半分以上の人が「知っている」と答えたものの、「使ったことがある」と答えたのは15%で、「日常的に使う」と答えたのは3%にとどまりました。
ライドシェアサービスのユーザーの年齢中央値は33歳、大都市とその近辺(サービスが提供されている地域)に住んでいる大卒以上・高収入層が多かったとのことです。

AirbnbやHomeawayなどのホームシェアについてもユーザーとして「使ったことがある」と答えたのは11%でした。
意外なことに「18~24歳」のユーザーが9%だったのに対し、「35~42歳」のユーザーが倍近くの16%で、年齢中央値は42歳でした。
ライドシェアユーザーは30歳以下の若い層、ホームシェアは40歳前後の壮年層に多く利用されているようです。

しかしいずれの場合も、ユーザーとしてこうしたサービスが選択できるということはいいことだと思う人の割合が多く、またフレキシブルに働きたい人やより多くの収入を得たいと思っている人にとっては、こうしたサービスが良い働き方だと考えているとのことです。

クラウドファンディングサービスについては、「使ったことがある」と答えたのは22%でした。しかし寄付の傾向はすでに親しい人に少しだけ、何度かしたことがある、という場合が多いようです。
実際の寄付額は「50ドル以下」が62%を占めており、参加したことのあるプロジェクト数については87%の人が「5つ以下」と答え、その多くは家族や友人知人などが関わるプロジェクトでした。

興味深いことに、プロジェクトの目的によって寄付する人の男女差があるそうです。男性は新しい発明や新製品の開発、女性は困っている人への支援に寄付する割合が高いとのことです。

人々はこうしたシェアリングサービス、ギグ・エコノミーを行う人のことを、被雇用者ではなく個人請負業者と考えており、多くの人が、ライドシェアサービスの安全性やドライバーの訓練にはドライバー自身と運営会社の両方に責任があり、ホームシェアによる宿泊中のトラブルについては家主と運営会社の両方に責任があると考えています。

また、これらのサービスを新しい移動・交通ビジネスや小売ビジネスモデルと考えるのは30%で、「需給のマッチングのためのプラットフォーム・サービス」ととらえている人が60%にのぼります。

調査を行ったAalon Smithは、「人々はこれらの新しいビジネス形態を、自分たちになじみのある概念によってとらえようとしている」と分析しています。

人々の消費に大きなインパクトを与えながら急速に広まりつつあるこうした新しいかたちの経済について、ピュー・リサーチ・センターは今年、これらについてあと2つの調査結果を公表する予定です。

●参考URL

「Shared, Collaborative and On Demand: The New Digital Economy」(Pew Research Center、2016年5月19日)

「Americans Like the Sharing Economy, Survey Says」(Digital Communities、2016年5月19日)