国際大学(南魚沼市)にて第2回サテライトオフィス誘致戦略研究会を開催
7月20日、国際大学GLOCOM、国際大学、南魚沼市との合同研究会である「サテライトオフィス誘致戦略研究会」の第2回目を開催しました。(第1回目はこちら)
今回のテーマは、「地方におけるIT産業クラスターの形成」です。今回は、和歌山県白浜町、福島県会津若松市、徳島県神山町の先行事例を踏まえて検討しました。今回は、サテライトオフィス入居企業の株式会社エム・ビー・エー、Noom Japan株式会社、株式会社プライムスタイルが参加しました。
◆タイムテーブル
0.ごあいさつ・問題提起(庄司昌彦:国際大学GLOCOM)
1. 和歌山県白浜町より(坂本和宏氏:白浜町総務課企画政策係)
質疑応答
2. 福島県会津若松市より(藤井靖史氏:会津大学准教授)
質疑応答
3. 徳島県神山町の視察報告(小林亮平氏:南魚沼市商工観光課)
質疑応答
4. 総括
庄司の発表資料はこちらからダウンロードできます。
1. 和歌山県白浜町より(Skypeでのご参加)
和歌山県白浜町は、 《温泉が湧き出すごとく新技術や新産業が生まれる創造的な地域を創ろう》という「IHS(Innovation Hot Springs)構想」の下、自然環境、人材資源、交通アクセスを活用したテレワーク事業に力を入れています。こうした取り組みは、国内サテライトオフィス先行例として注目され、平成16年に設立された白浜町ITビジネスオフィスは、セールスフォース・ドットコム社、NEC社の入居の影響もあり現在満室の状況で、第2オフィスの設立も計画中です。
質疑応答
・地元でのIT人材をどのように確保しているのでしょうか。
-サテライトオフィス事業の最終目標の一つは、現地採用です。IT人材育成のための地域プログラミング教室開催や、県主催の就職・転職イベント出展など地道な取り組みを続けています。また、都市から移り住んできた人が、寂しい思いをしないよう、積極的に交流企画を設けています。
・こうした企業や地元との交流によって生まれた副産物はありますか。
-ビジネス面では、セールスフォース社とお隣の企業の連携がありました。こうした連携を生む関係を育てていくためには、日頃から一緒に地元を楽しむことや、夏のBBQなどを通じた家族ぐるみでの付き合いも重要です。
2. 福島県会津若松市より
福島県会津若松市は、学生数に対する起業率が全国1位である会津大学を中心に、多様な人を繋ぐ地域ネットワークづくりが盛んです。他者と議論し、新たなネットワークを築き、アウトプットを生み出していくこと。すなわち《対流》を創ろうということです。
例えば、主に研究室の中にいた技術者が地域の人と交わることで、日産電気自動車リーフは「ビアガーデン」や「冷凍食品の移動販売」という新しい発想を得ました。また、ソラミツ社との合同事業であるブロックチェーンプロジェクトでは、その技術がカンボジア中央銀行で採用され、会津若松でカンボジアの技術者を受け入れるという国際展開に繋がりました。
質疑応答
・《対流》を生み出すためには、どのように対話や連携を深めていけば良いのでしょうか。
-イベントを開催する時には、毎回テーマを変え、いつも同じ人達ばかりにならず様々な人が集まるように工夫しています。この時、東京から地方へ人を呼ぶようにすることも、意識しています。また会津若松市では、市の職員も一市民としてよく参加してくれます。行政が企画すると、参加する年齢層に偏りが出やすいので、若者が集まる場などに一個人として合流する方が効率的ではないでしょうか。
3. 徳島県神山町の視察報告
南魚沼市は、他地域のサテライトオフィス事例と南魚沼の取り組みを比較することを目的として、徳島県神山町を視察しました。徳島神山町も急速な人口減少に直面する地域でしたが、クリエイティブ人材の誘致やICTインフラ等を活用して、多様な働き方を実現するビジネスの場としての価値を高めようとする「神山プロジェクト」を立ち上げました。芸術家を誘致する「アートインレジデンス」、町から働き手を逆指名する「ワークインレジデンス」など移住支援を積極的に行なっています。国際交流、アートなど多様な実績を積み重ねてきた神山町では、2011年度に転入者が転出者を上回り人口12人増を達成しました。
南魚沼市では、国際大学との連携を強化し、海外戦略や国際性を特色としたサテライトオフィス誘致を実現していく予定です。
質疑応答
・新潟県十日町市・津南町の「大地の芸術祭」もアートインレジデンスに似ていますが、神山町は人の移住により直結しているように見えます。両者の違いは何でしょうか。
-「大地の芸術祭」は、イベントの規模と観光に特化し、その点で日本一です。一方で神山町は、移住支援のNPO法人を中心に、情報サイト運営や移住後のサポートに尽力しています。その中で生まれたアートは副産物的な位置付けと言えるかもしれません。ちなみに、前述NPO法人の代表の方は、もともと建設会社を経営されていました。「自分の街を活性化させないと商売が成り立たない」という危機感・切迫感もまた、神山町を押し上げた要素であると言えるかもしれません。
4. 総括
これらの事例を踏まえ、フリーディスカッションを行いました。参加者から、以下のようなご意見をいただきました。
・行政が投資しても、建物や枠組み作りに留まってしまい、活用できていない例もたくさんあります。多様な他者との《対流》を生み出すことの大切さを痛感しました。
・南魚沼には、すでに十分に材料が揃っています。しかし、それらが繋がっていない、有機的でない状態にあります。それらの連携を活性化させること、中から生み出していくサイクルを作ることが、今後の課題なのではないでしょうか。
・もちろん、失敗の経験も大事です。同じ仲間でたくさん失敗をすることで強くなります。 都市部から地方へ来た人の場合は、お酒を飲み交わし絆を深めることで乗り越えやすくなります。
特に議論が盛り上がったのは、西会津で生まれた、除雪しながらエクササイズをしようという取り組み、「ジョセササイズ」です。今回は地域の医療や住民の健康に取り組む参加者が多く、これを機に西会津や入居企業と連携して新たな事業開発ができないか、活発に意見交換をしていました。
◆以下は、当研究会の今後の予定です。
第3回「南魚沼におけるIT企業誘致戦略について」
日時:9月7日(木)14時~17時
会場:国際大学(南魚沼市国際町777)
概要:入居企業のお試しサテライトオフィスに関する評価等を元に、地方に知識労働者のマイクロ・クラスターを形成しビジネスを国際展開していくという将来像に向けた論点を整理します。