MaaSでオープンデータとシェアリングエコノミーが交差する
オープンデータやシェアリングエコノミーについて、それぞれ別に紹介してきましたが、それらを組み合わせて活用する、新しい交通機関の使い方として、MaaSが注目されています。
MaaSとは「Mobility as a Service」の略で、「サービスとしてのモビリティ(移動性)」と訳されます。交通機関を使って移動する際に、これまでは電車やバスの路線検索やタクシーの利用など別々に行き方を調べ、それぞれに運賃の支払いを行っていました。しかしMaaSのサービスを使うことで、アプリから目的地を指定するだけで最適な交通機関の使い方が表示され、決済まで一括して行えるようになります。また、かかる時間や嗜好によって利用する交通機関を選ぶこともできます。
運賃の支払いは移動する頻度などによって月額に一定額を支払うプランが存在することも特徴です。既存の路線検索でも、鉄道やバスの組み合わせ検索に対応しているところもありますが、レンタサイクルやタクシー、ライドシェアの利用も組み合わせているところに先進性があります。また、交通の最適化が行われることで、自然環境の保護や渋滞の発生しない快適な都市交通を実現できると予測されます。さらに、個人が自家用車を所有する必要がなくなり、車を持つことで発生する初期費用や維持費を支払う必要がなくなります。もちろん、交通機関に乗るごとに毎回運賃を支払うという手間も省けます。
このサービスを実現するためには、公営の路面電車・地下鉄・バス・レンタサイクルや民間のタクシー、ライドシェアなどのデータを連携させることが必須となります。さらに、実際の運用するためには各交通機関の運行状況などのオープンデータの活用、運行から得られる様々なビッグデータの分析、個人が自分の履歴を管理・運用するパーソナルデータ活用、需要者と供給者をマッチングするシェアリングエコノミーの機能などが必要となってきます。まさに、今後活用が見込まれる様々な技術が交差するサービスといって良いでしょう。
MaaSの具体的な事例として、フィンランドのヘルシンキで利用可能なスマホアプリ「Whim」が挙げられます。2016年6月から実験的な導入が始まったこのアプリは、目的地を設定すると、最適な経路が表示され、ユーザーが経路を確定すると、バスや電車、自動車の運賃の決済を一括で行います。アプリの利用イメージはこちらの動画をご覧ください。
MIT Technology Reviewによれば、Whimはヘルシンキ以外にも、イギリスのバーミンガム、トロントやモントリオール、そのほか複数のアメリカの都市での展開を目指しているとのことです。
地域SNS研究会事務局庄司昌彦(国際大学GLOCOM准教授/主任研究員)は、新・公民連携最前線(日経BP)で、「多様な交通網が発達している東京こそ、その力を発揮できる」と述べており、2020年までに公共交通のオープンデータで「モビリティ・アズ・ア・サービス」を実現する目標を提案しています。また大都市圏以外の地域では、人口減少や高齢化の進展にともない、鉄道・バスの不採算路線の削減・廃止や、高齢者の運転免許証返上など、交通手段の転換が大きな課題となっています。あらゆる選択肢から最適な移動手段を導き出すMaaSは、日本においても受け入れられる可能性があるといえるのではないでしょうか。
◆ 参考サイト
- MIT Tech Review: 自動車所有ゼロを目指すヘルシンキの実証実験
- Home – Whim travel by MaaS Global
- オープンデータが地域を変える | 新・公民連携最前線 PPPまちづくり