香港発「モノ版Uber」、lalamoveの事例
現在日本では、ネット通販市場の急成長と共に荷物の運送量が増えたことにより、運送会社の配達員の過重労働が話題となっています。
そんな中、近年物流業界のシェアリング化が進行しています。例えば、日本でもハコベルのような、運送会社と配送依頼者のマッチングサービスが登場しています。また、Amazon Flexのように、商品の配送を一般の登録利用者に委託するサービスも登場しています。
lalamoveは、香港発祥のオンデマンド・デリバリーサービスで、「モノ版Uber」とも呼ばれています。モノを運んでほしい利用者は利用登録をしたのち、目的地や希望の車種を入力します。すると、利用者に条件の合うドライバーとのマッチングがなされる仕組みになっています。手続きは分かりやすく、料金はリーズナブルです。運んで欲しいモノのサイズや重さによって、オートバイ、バン、5.5トントラックなどが選べ、待機時間や走行距離によって料金は変動します。GPS機能により、リアルタイムで配送状況を知ることができるのもメリットの一つです。例えばビジネスの場面で利用する場合、複数の品物を複数の配送先に配送してもらうこともできるのです。配送中は5000香港ドルまでの補償付きという点でも安心です。また、お気に入りのドライバー情報を保存しておくこともできます。ドライバーにとっても、手数料を支払うことなく空き時間を活用できるなどのメリットがあります。
2013年10月、香港でlalamoveの先駆けとなるEasyVanが創設されました。翌年2014年以降、台北、広東、深圳、シンガポール、バンコクなどのアジア都市へとサービスを拡大しました。こうしてサービスの価値が評価され、2015年には「Crystal Stream Capital」などいくつかのベンチャーキャピタルから1000万米ドルを資金調達し、3万人以上ものドライバーが100万件以上の取引を達成する規模に成長しました。また、こうした利用者急増の背景には、他サービスとの連携実績があります。シンガポールではIKEAと提携し、IKEAで購入した物をlalamoveのドライバーで配達すると、割引が受けられるサービスが提供されています。また香港ではGoogleと提携し、Nexus 5Xと6Pを購入するとlalamoveで配達してくれます。ちなみにタイでは、「LINE」と現地のレストランポータル「Wongnai」と提携し、食べ物やコンビニ商品の配送を依頼するサービスが始まりました。
lalamove役員のBlake Larson氏のインタビューによると、ドライバーと利用者のマッチングサービスとしては、Uberと共通する点も多い一方で、複数の配送物を複数の配送先に様々な車両で送ることは、人を乗せてひとつの場所へ運ぶよりも高度なオペレーションが求められます。
日本のような配送・物流システムが十分に確立していない香港においては、eコマース市場の拡大もあり、こうしたモノの配送サービスの適応性が高いと言えます。
参考文献
- THE BRIDGE「世界で広がるモノ版Uberの波、オンデマンド型配送サービスを運営する『lalamove(ララムーブ)』」2015年2月6日
- THE BRIDGE「香港拠点の配送版Uber『Lalamove』、1000万米ドルを調達して中国拡大へ」2015年9月14日
- ITmedia「LINE、タイでフードデリバリー&配送サービス『LINE MAN』開始」2016年5月17日
- 株式会社いそのボデー「物流業界における『空き時間をシェアする』という発想」2016年10月20日
- TECHINASIA「Hong Kong logistics startup Lalamove nabs $10M from Chinese investors」2015年1月5日
- NIKKEI ASIAN REVIEW「Startups wage war at home and across Asia」2016年3月17日
- 科技產業資訊室「新電商4.0時代:(二) Lalamove 啦啦快送打造物流業Uber」2016年11月9日