「恋するフォーチュンクッキー」ご当地バージョンの意義を考える

恋するフォーチュンクッキー 神奈川県 Ver. / AKB48[公式]

恋するフォーチュンクッキー 神奈川県 Ver. / AKB48[公式]より

 

アイドルグループAKB48の最新シングル「恋するフォーチュンクッキー」に合わせて踊りながら、さまざまな人や場面を紹介する動画の製作が夏ごろから広がっています。

社内のさまざまな部署や社員を紹介するもの(サマンサタバササイバーエージェント日本交通等)、顧客との関係を紹介するもの(IBM)、社会的メッセージを届けるもの(テキサス州立大学MDアンダーソンがんセンター)と、さまざまな試みが行われています。こうした取組みの中のひとつとして、首長や行政職員、ゆるキャラ、地域住民等が登場し、さまざまな施策や事業、観光地などを紹介する「ご当地バージョン」があります。

「ご当地バージョン」の皮切りになったのは、神奈川県庁や佐賀県庁などが作成した動画です。神奈川県版の動画は、YouTube上での累計再生回数が300万再生を超え、神奈川県の黒岩知事を訪問したケネディ米国大使が話題にし踊ってみせたこともニュースになりました。佐賀県版の動画も、公開後18日間で再生回数が100万再生を超え、県庁での常時放映やメイキング写真などの巡回展示へと発展しました。佐賀県庁のホームページでは下記のような反響の声を紹介しています。

全国から、「来年は里帰りしよう」、「行きたくなった、住みたくなった」、「佐賀県庁で働いてみたい」などの温かいコメントが続々と寄せられ、なかには「ふるさと納税したくなった」という声もいただいています。(出典:http://www.pref.saga.lg.jp/web/kankou/kb-bunka/_74652.html

兵庫県猪名川町では、ボランティア約10人が予算0円でスマートフォンを使用して動画を作成しました。これがAKB48プロデューサーの秋元康氏に「温かくていい」との評価を受け、AKB48のオフィシャルチャンネルに掲載されたことも話題となりました。

動画コンテンツには、「テキスト情報に比べ多くの情報量を短時間で伝えることができる」「見せたいものを見せたい順番で見せられる」といった効果があり、YouTubeなどネット上で公開することでTwitterやFacebookなどのソーシャルメディアを通じた急速で広範な伝播を期待することもできます。

今回の「恋するフォーチュンクッキー」以前にも、住民参加による動画作成・公開の取り組みとして「住民参加型映画製作」や「住民ディレクター」が各地で行われており、情報通信技術を活用した地域活性化(地域情報化)という観点から研究も行われています。それぞれの代表的な事例として、住民参加型映画は、三鷹市と福島県白河広域12市町村が参加した「らくだ銀座」や愛媛県西条市の「恋まち物語」、東京都東大和市の「人生ごっこ!?」(ミンスク国際映画祭コンペ部門特別賞受賞)が、「住民ディレクター」は、熊本県山江村福岡県東峰村などが知られています。

これらの取り組みでは、動画作品の芸術的あるいは商業的な成功という効果以外にも、資金調達、ロケ地選定、出演依頼、ロケ実施、編集、上映などを住民自身が行うことで住民自治力の向上、地元資源の再発見、人つなぎ・結束強化などの効果が見込まれ、映像製作のプロセス自体に大きな意義があると評価されています。